前回の記事で第3世代Ryzenが空前のヒットになっていることを紹介しました。
性能はインテルを上回ることは皆さんのレビューでも証明されているところです。
性能がいくら良くても値段が高ければ、あまり話題にならないですよね。
第3世代のすごいところは性能は上なのに、値段が安い点です。
第3世代Ryzenは安いのか?
インテルのCore i9 9900Xを格下の
Ryzen 3700Xで迫ってしまうということで、価格性能比ではインテルは到底太刀打ちできなさそうです。
インテルのCPUが値下がり傾向なのもこのあたりが原因だと思います。
しかも、インテルはCPUが上がるたびにチップセットが変わったりして
同じマザーボードが使えない問題があり、高コストになる傾向があります。
Ryzenは一部、制限が付きますが、第1世代Ryzenもマザーボードでも第3世代が動くということで
非常に乗り換え時のコストパフォーマンスが高いこともすごいところかと思います。
なぜ、第3世代Ryzenは安いのか?
前の記事でご紹介しましたが、第3世代Ryzenは7nmプロセスという最新のプロセスを利用しています。
半導体のプロセスというのはどれだけ、小さく回路を作れるか?ということになります。
半導体はシリコンウェハーという板の上に回路を作りますが、ウェハーの面積が広いと高くなります。
小さく作れるということは、同じ面積でより多くのトランジスタを詰め込むことができます。
CPUの改良に使ったり、コア数を増やしたり、メモリーを増やしたりできます。
さらに小さく作ることで消費電力が低減されて、クロックスピードも向上します。
このため、プロセスが進化するたびにCPUは劇的に速度が向上していきます。
昔、パソコンがすぐに古くなったのはこのためです。
しかし、最近はプロセスの進化が物理的な限界により阻まれてきており
昔のように小さくすることが難しくなっています。
いろいろな要因はありましたが、インテルは4年も同じプロセスに停滞しています。
昔が半年から1年ごとに新しいプロセスになっていたことを考えると異常なほど長い状態が続いています。
7nm世代も色々と弊害がでており、
・思ったほど消費電力が下がらない
・クロックがあがらない
・プロセスを適用するのにコストがあがる
などの現象が起きています。
実際、コスト問題は深刻で、このままプロセスが進むと、コストが右肩上がりになってしまいます。
そこで、AMDはチップレットアーキテクチャというものを採用しました。
チップレットアーキテクチャとは?
7nmでコストが上がってしまうため、使うシリコンウェハーの面積を減らすと
コア数が減ったり、性能が犠牲になってしまいます。
ここで、AMDはある点に着目しました。
実はCPUのI/Oと呼ばれる入出力部分は7nmを適用しても、もっと大きいサイズで作る必要があります。
I/OはメモリーのインターフェースはPCI Expressなどの入出力を司る部分で
ここはCPU内部の演算信号に比べて数倍高い電圧で動かす必要があります。
この場合、7nmぐらいまで小さくしてしまうとトランジスタの電圧を超えてしまったり、
配線間の絶縁が壊れてショートする問題があります。
そのため、7nmでも大きめに作る必要があります。
ここに目をつけて、7nmで作る必要がない部分を14nmで作ろうと考えました。
7nmでCPUコアを作って性能を高めて、それ以外を14nmで作ることでコストを抑えました。
以前のCPUは1個でしたが、
第3世代Ryzenのコアを見ると別れています。
これによる分割損がでますが、7nmのコストや歩留まりを考えると
トータルでコストが安くなるということです。
これが性能が高くてもコストを抑えることができた要因になります。
実は第3世代Ryzenがキャッシュメモリが多い理由は
この分割したチップ間でのメモリ転送が遅延が増えるため、これをカバーするために増やしたのですが
それが性能向上にも効いているようです。
インテルのアプローチも気になりますが、もしかしたらこういった方法が当たり前になるかもしれません。